終活コラム

遺品整理士の終活コラム

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第22回 死後離婚、という言い方はおかしいけれど

正しくは姻族関係終了届と言います

みなさま、こんにちは。株式会社三共の吉川徹でございます。わたしのテキストの遅さゆえにしばらくぶりでございますが(笑)、いかがお過ごしでしょうか。本日も宇宙に浮かぶスペース・デブリが透けて見えそうなくらいの晴天になっておりますが、夏、好きですか。

さて、今回のテーマは「死後離婚」。言葉自体はみなさまもどこかで耳にしたことがあるかもしれません。「死んだ相手とは、結婚も離婚もできないと思うけれど・・・」と思ったあなたは正解。日本では死亡した相手との結婚は不可(※1)。また、配偶者が死亡した時点で自動的に離婚は成立します。

したがって。「死後離婚」という単語は造語で、正しくは「姻族(いんぞく)関係解消届」と言います。「姻族」というのは、結婚によって生じる義理の両親・兄弟との関係をさし(血族という言葉の対義語ですね)、わかりやすく言うと、マスオさんから見た磯野家の人々(波平・フネ他)がこれに該当します。 

「死後離婚」というのはすなわち、サザエに先立たれたマスオさんが、義家族との関係を一切合財断ち切りたいと思い、先の書類を提出する行為を言います。マスオさんにはお茶の間の我々には言えない、何か不満があったのかもしれません(笑)。

 

 

 

立場に準拠した人間関係は、簡単に崩壊する

例えばこういうケースがあると思います。夫が他界し、妻と高齢の夫の両親が残りました。義理の両親も親族も、今までどおり残った妻(嫁)が両親の世話をすると思いきや、「わたしにも高齢の両親がいますから、夫との死別を機に実家に帰らせていただきます」と言って、姻族関係を解消して実家に帰りました。

このような姻族関係終了届の提出が年々増えている(※2)そうです。実はこの書類を出さなくても、義理の両親を扶養する義務はない(※3)のです(そして義理の両親からの相続もありません)。「だったらそんな手続きをしなくても、先の女性は勝手に実家に帰ればいいのに」と呑気なわたしは思うのですが、とかく世間は世知辛いもの。「年老いた両親の介護は嫁の仕事」という概念が強いのでしょう。

人間関係は個人が基本。配偶者が他界した後の義家族との関係は難しいですよね。今までよくしてもらったからこれからも同じように交流を、というケースもあれば、さんざん家政婦のようにこき使われてもうまっぴら、これを機に舅・姑とは関わりたくない、というケースもあると思います。稼業や財産や孫がからめば、問題はより複雑になるでしょう。

残念ながら、家族というものは無条件に素晴らしいものではなく、それを構成するすべての人々が精一杯の努力をして、初めて素晴らしい家族になるものなのです。そして、誰かひとりがつらい思いをしているのなら、その人はそっとその場を離れるべきなのです。

そういう意味において、姻族関係終了届の増加はいろいろ考えさせられる現象ですよね。ちなみに手続きは簡単、書類を1枚役所に出すだけ(※4)です(もっとも結婚も離婚も紙1枚で成立します)。また、姻族との関係を終わらせても、亡き配偶者から相続した遺産や遺族年金は、変わらずに受け取ることができます。

 

 

 

子供の結婚相手なんて、「究極の赤の他人」である

逆の立場になって考えてみましょう。「関係を解消したい」として提出された姻族にしてみれば、裏切られたと感じるかもしれません。何せ「縁を切りたい」という一方的な通告書なのです。せめて息子の財産は置いていけ、とか、せめて孫だけは、なんて争いになるケースも実際にあるそうです。でもこれも、おかしな話ですよね。

執着をしない。終活ではとても大事な考え方だと思います。以下は、わたしの個人的な考えですが、自分で選んだはずの結婚相手ですら、ままならないもの。自分で選んで連れてきたわけではない子供は、もっとままならいもの。だとしたら、子供の結婚相手なんていうものはもはや、「究極の赤の他人」でしかありません。

何ひとつ共有できないそうにない、というところから人間関係を構築するしかありません。絶望や皮肉ではなく、マナーとして。

人間関係に過度に執着しない。自分たちの世代はこうだった、嫁が義両親の面倒を見るのは当たり前だった、という話をしても仕方ありません。そもそも嫁という概念が揺らいでいるのです。仲良くできるのならそれでいいし、うまくいきそうにないのなら距離を取るしかありません。

姻族関係終了届の増加は、現代の家族の在り方の難しさを物語っていると思います。端的に言えば、「家族(身内)が苦しい」(※5)のかもしれません。

解決策は執着しないこと。簡単にはできないことですが、「人が年を取るのは何かを学ぶためである」ということで。最後はずいぶん説教臭くなってしまいました(笑)。それでは、また。

かくいうわたしは、相当にケ・セラ・セラな人間なのです。あれ、これ古い?

(次回更新予定日 : 7月10日)

 

 

 

※1 日本では死亡した相手との結婚は不可
「日本では、ってどゆこと?」と思ったあなたは正解。外国では死者と結婚した例があるのです。2002年のフランスでのお話です。ひとりの女性が婚約者を交通事故で亡くしました。結婚を約束していた彼女は深く悲しみ、首相に慈悲を乞いました。ですがフランスは愛の国。首相は法と自らの権限により、彼女の願いを聞き届けました。翌年、かくして彼女は黒いスーツで結婚式に臨み、式の終了と同時に未亡人となりました。おしまい。この話(事実です)のすごいところは、彼女の一途な思いより首相の英断より、そもそも「死者との結婚を認める法がある」ということだと思います。ロマンティックですよね。

※2 姻族関係終了届の提出が年々増えている
法務省の統計では平成27年は2,783件、この10年で1.5倍に増えているとのこと。そして提出するのはほとんどが女性だそうです。確かに男性が提出するイメージはないですよね。妻を亡くした夫に対して、義理の両親が「わたしたちの老後の面倒を見るのは当たり前だ」とはなかなかならないですよね。老後の面倒を見るのは子の責務ではありません。国、です。年金も介護も、そのために国が制度を整えているのです。介護は国の仕事。家族をベースにした制度設計には無理があるのです。

※3 義理の両親を扶養する義務はない
法律的な話になりますが。夫が死亡した場合、妻を含む3親等の家族までは両親の扶養義務があるそうです。しかし実際に義務が発生するのは、「残された妻は両親を扶養せよ」と家庭裁判所が命令したときだけ。それがないときは扶養しなくてもいいそうです。しかも命令が出たときは、姻族関係解消届を出せば瞬時に無効にできます。つまり法律上は、「残された配偶者はいつでも義家族と縁を切ることができる」ということ。覚えておいて損はない法律知識だと思います。あなたがどちらの立場であるにせよ。

※4 ちなみに手続きは簡単、書類を1枚役所に出すだけ
書類は紙1枚のみ。本籍地か、住所地の市区町村役場に提出するだけで、期限はありません。死別して30年後に出すことも可能です。この手続きができるのは残された配偶者側だけで、義家族側はできません。受理後に義家族側にその旨の連絡がいくこともありません。また、結婚する前の姓に戻すこともでき、この書類を「復氏届」と言います。ちなみに「義家族」という言葉はあまりよくないと思いますが、わかりやすさを優先して今回は使用させていただきました。

※5
 「家族(身内)が苦しい」
たまに夫が妻を殺す(あるいは妻が夫を殺す)事件が起きます。こういうニュースを聞くと、殺すくらいなら離婚すればいいのに、なんてわたしたちは安易に思いますが、そうはいかない当事者間の事情があるのでしょう。話は多少それますが、警察庁の平成24年の統計によると、家族・親族間の殺人は全体の53.5%を占めるそうです。ここでいう家族・親族間はいわゆる内縁の関係も含めるそうですが、半数以上が家族に殺されているという事実。まさに「家族(身内)が苦しい」のだと思います。自然発生的に素晴らしい家族が構築できるわけではないし、家族に苦しんでいる方は、その関係を解消することを真剣に考えるべきだとわたしは思います。

 

 

 

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吉川徹(よしかわとおる) プロフィール
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1977年静岡県浜松市出身

遺品整理士(IS02984号)
終活カウンセラー上級インストラクター(15120603)
最終処分場管理責任者

【近況報告】
「召し上がれるぶんだけよそってください」。ランチで入ったラーメン屋さんの、無料ごはんコーナーにこう書いてありました。何もかも、納得。無料サービスに甘え過ぎてはいけません。少なめによそおって、何杯もお代わりをすればいいんだしね、うんうん。・・・よそおい過ぎました。うぷ。午後の仕事に支障がでそう。おまえはリアルさんきょちゃんか。

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第21回 ありがとう、ねんきん定期便

ねんきん定期便 / どうして年金部分を / ひらがなに?

みなさま、こんにちは。株式会社三共の吉川徹でございます。前回に続いてテーマは年金、今回は特に「ねんきん定期便」についてお話したいと思います。

「国民皆年金」とも呼ばれる国民年金(公的年金)の加入は強制で、イエスもノーもないと申し上げました。そうであるのなら、個人レベルでできることは「もらいはぐれない」こと。だいたいでいいですので制度を理解して、最大限のリターンを手にしましょう。

ちなみになのですが、国民年金には3種類あり、「老齢年金」の他にも、「遺族年金」と「障害年金」というものがあります。わたしたちがよく口にするものは「老齢年金」、65歳という加齢によって支給される性格のものになります。

20歳から60歳までの実に40年間、年金の世界では480ヶ月間という言い方(※1)をしますが、支払い期間は本当に長いですよね。わたしはあと20年間も残っています、しみじみ。

 

 

 

祝います / ねんきん定期便で / あなたの誕生月を

さて。2009年の4月から「ねんきん定期便」と呼ばれるハガキが年に1回、個々の誕生月に送られるようになりました。国民年金機構のサイトには、「年金加入記録をご確認いただくとともに、年金制度に対するご理解を深めていただくことを目的として」とあります。

発送する側にしてみれば、すべての国民に対して毎年送る(※2)のですから、大変な労力ですよね。年金改革の果実のひとつだし、素直にその行政努力に感謝したいと思います。届いていない人は住所の変更ができていない可能性がありますから、役場の担当窓口等にお問い合わせください。

ハガキに書かれている内容は、年金加入期間、老齢年金の見込み額、これまでの保険料納付額等です。ぜひ1年に1回、誕生月には年金に思いをはせてみてください。

そして、35歳・45歳・59歳のいわゆる「節目年齢」には、ハガキではなく封書で、より詳細な情報が送られてきます。年金加入記録や、厚生年金のすべての期間の月毎の標準報酬月額等がそれです。また、加入記録に「もれ」や「誤り」がある場合には、同封の書類で修正の手続きを取ることもできます。

ではなぜ、節目とされる年齢が35歳・45歳・59歳なのでしょうか。

「ねんきん定期便」は未納者にも郵送されます。35歳は、今までまったく払ってこなかった人でも、60歳までの残りの25年間(正しくは300ヶ月間)保険料を納めれば、年金受給資格を得られるから、という理由です。

45歳は、同じように今までまったく払ってこなかった人でも、厚生年金に加入できる上限の年齢であり、また、国民年金に任意加入できる上限の70歳まで25年間(正しくは300ヶ月間)あるから、です。

つまり。35歳と45歳は、「一念発起してここから払い始めれば、まだぎりぎり間に合いますよ」という年齢なのです。59歳は最終調整、過去の年金加入記録とより正確な支給の見込み額をお知らせするためです。

 

 

 

国民年金 / 自分で守って / 豊かな老後を

国民年金は60歳で支払いが終わります。もらうためには60歳と65歳のときに手続きが必要です。けっして自動的に送金されてくるわけではないのです(笑)。こういう仕組みを申請主義(※3)というのですが、裁定請求書というものが郵送されますので、年金事務所へ提出してください。

また、さまざまなオプションも用意されていますので、いくつかご紹介します。

ひとつは「繰り上げ受給」。65歳を待たなくても、60歳から64歳までの間から支給を受けることができます。ただし、受給額は生涯に渡って減額されるので注意が必要です。ちなみにその逆の「繰り下げ受給」もあり、こちらは生涯にわたって増額されます。

また、480ヶ月間の満額支給に満たない方は、60歳から65歳までの間に保険料を払うことができ、これを「国民年金の任意加入」といいます。満額に近づける最後のチャンス、といったところでしょうか。さらに「付加年金」(※4)というものもあります。

最後に。国民年金は極めて重要な制度の変更があります。平成29年10月より、受給資格が現行の25年・300ヶ月間から、10年・120ヶ月間へ(※5)と変わります。これはとても大きな改革で、単純に言えば「年金をもらえる人が増える」ということです。

これは本当に素晴らしい改革。これによって助かる人は大勢いるはずです。世の中は少しずつ良くなっている、わたしはそう思いたいし、そういう姿勢で世の中と向き合いたいと常にそう思っています。

えっ、ロマンティストですね、って? たまに言われます、えへへ。ちなみに今回のサブタイトルはまったく五七五調になっていませんでした。反省、それでは、また。

 

 

 

※1 年金の世界では480ヶ月間という言い方
前回、基礎年金部分の支給額は、平成29年度は年間で779,300円とお伝えしました。正確に言うとこれは480ヶ月間すべて払った場合の満額支給額。未納期間があるとそのぶんが減額されます。例えば10年間(120ヶ月間)の未納期間がある人は、合計で360ヶ月間支払ったことになり、支給額は「480÷360」、つまり「75%」の額になります。算盤を弾くと年間で584,475円になります。そして25年間(300ヶ月間)を下回ると、受給資格を失います。それが今回、改革されます。

※2 すべての国民に対して毎年送る
少し訂正させてください。送られるのは「20歳から60歳まで」です。すべて、は言いすぎでしたね。とはいえ、大変な作業であることに違いはありません。行政の仕事はうまくいっているうちは誰も褒めてくれず、うまくいかなくなると責められるきらいがあります。でも運営しているのは人間、いつもそうだと腐ってしまいますよね。したがってうまくいってるときには褒めてあげましょう、などとわたしは思うのですが、いかがでしょうか(笑)。ありがとう、ねんきん定期便。ちゃんと読んでるからね?

※3 申請主義
申請主義はおかしい、不便だ、という言説もありますが、こと国民年金に関しては致し方ないところ。年金の支給は「国民の権利」ですから、自分で金額等を確認する作業は必要だと思います。65歳になったときに、突然、自分の口座に政府から現金が振り込まれる方がむしろ怖いですよね。どこでわたしの口座を調べたんだ、と(笑)。まあ、もちろんそんなものは把握しているわけですが。政府はきちんと情報を提供し、国民は自分たちで申請をする。お互いに協力しあって生きていきましょう。

※4 「付加年金」
年金受給額を増やす方法のひとつが付加年金。あまり知られていないのですが、毎月400円を上乗せすると、受給金額が「200円 × 納付した月数」ぶんだけ増えます。例えば、10年間支払うと負担額は48,000円になり、24,000円をプラスした支給額が生涯続きます。わたしはこれを年金事務所の窓口の担当者から直接知ったのですが、「つまり2年でもとが取れるのですね?」と言うと、「そのとおりです(お兄さん、察しがいいね)!」と言われました(笑)。5年くらい前の話ですが、とても親切でとても年金制度に熟知していました。あなたがやればいいのに、終活カウンセラー(笑)。

※5
 25年・300ヶ月間から、10年・120ヶ月間へ
いわゆる無年金者が減るであろうこの改革、個人的に大賛成です。これはもともと消費税の引き上げに合わせるかたちで考えられていたのですが、ご存知のとおり消費税は据え置きに(ここでは余談になりますが、消費税は引き上げられるべきでした)。ですが、10年・120ヶ月間だけ払ったとしても、もらえる額は満額支給額の25%。「可能な限り、満額の480ヶ月間に近づけたほうがいい」のは事実です。ちなみに平成28年2月のデータで、国民年金の納付率は61.2%。受給資格を下げることで、納付率の上昇を狙っているとも言えます。

 

 

 

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吉川徹(よしかわとおる) プロフィール
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1977年静岡県浜松市出身

遺品整理士(IS02984号)
終活カウンセラー上級インストラクター(15120603)
最終処分場管理責任者

【近況報告】
わたしも浜松祭りに参加したのですが、町内の法被の下にオリジナルの法被を着ている若い人、いますよね。お洒落な重ね着、なのかもしれません。それにしても、5月と言えども夜は冷えますねえ。わたしはお酒を飲まないから、余計に。下に一枚着込んでくればよかった。・・・む、そういうことか。

 

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第20回 年金がもらえないって言ってるの、誰?

イエスもノーもないのであれば

ゴールデン・ウィークのご予定はもう決まりましたでしょうか。株式会社三共の吉川徹でございます。5月の3・4・5日には「浜松祭り」というものがあって(※1)、この時期になると街全体が祭り前夜ならではのちょっとした高揚感に包まれる、気がついたらもう、そんな季節ですね。

さて。今回と次回は「年金」を取り上げたいと思います。昭和36年にスタートした国民年金(公的年金)制度は「国民皆年金」とも呼ばれ、加入は強制です。

「個人情報が漏れたりして信用できないよ」とか、「制度設計に難があるからわたしは加入したくない」とか、いろいろご意見はあると思います。ですが、社会保険料として天引きされているサラリーマンにしてみれば(わたしもそうです)、「イエスもノーもない」のが事実。払いたいも、払いたくもないもないのです。解約も脱退もできません。

そうであるのなら、個人レベルでできることは「制度をよく知って損をしないこと」。確かに年金はわかりにくいところも多々あるのですが、大枠(おおわく)だけでも一緒に確認してみましょう。

 

 

 

質問 : 国民年金は本当にペイするのでしょうか

国民年金はよく家屋の構造に例えられます。1階部分が「基礎年金」、2階部分が「厚生年金(※2)」、3階部分が「厚生年金基金」になります。どこがどう家屋なのかというと、基礎年金(1階)の受給資格を満たさないと、厚生年金(2階)ももらえない、ということです。

わたしたちは20歳から60歳まで保険料を払い、原則、65歳になると年金をもらえるようになります。「40年間も払わなくちゃいけないの?」という声が聞こえそうですが、そうなると気になるのは損益分岐点。わたしたちは払った以上の金額をもらえるのでしょうか。

つまり。国民年金は本当にペイするのでしょうか。

いい質問ですよね。ではせっかくですから、ここでは1階部分の基礎年金を例に取って、算盤を叩いてみましょう。

平成29年度の保険料は、月額16,490円です。1年で約20万円と仮定すると、40年間で約800万円納めることになります。

では、いくらもらえるのでしょうか。65歳から支給が始まり、その金額は平成29年度は年間で779,300円になります。約80万円、といっていいと思います。そこから「何歳まで」保険料をもらいますか。それはあなたが亡くなる日まで、です。そして。日本人の平均寿命は男性は80歳、女性は87歳でした。

支払った額が800万、受け取る額は1年で80万、10年受け取ると800万になるから・・・。

ということで答えが出ました。「75歳まで生きれば国民年金はペイする」(※3)が解答になります。もしあなたが平均寿命まで生きれば、男性なら400万円、女性なら960万円の大幅な黒字になるのです。

 

 

 

解答 : 国民年金は本当にペイします!

このように冷静に算盤を弾いてみると、実際には考えられないほど加入者が有利な仕組みになっています。基礎年金は国庫が2分の1を、厚生年金は事業所が2分の1を負担。民間ではありえない金融商品、と言ってもいいと思います。

かつて、「年金がもらえないって言ってるの、誰?」という政府CM(※4)がありました。詰問口調のそのスタイルは議論を呼びましたが、言っていることだけを言えばそのとおり。「今、納めていれば必ず受け取れる。それが国民年金」というあのCMのコピーに、実際に嘘はないのです。

とはいうものの、国民年金に対する国民の不信感は根強いものがあります。「浮いた年金問題」もありましたし、そもそも制度が本当に複雑で(※5)、納める保険料も、受け取る年金額も毎年変動します。手続きが申請主義なのもまた、拍車をかけていますよね。

日本人は税金を払うことに強い抵抗感があると言われますが、国民年金にも同じようなことが言えると思います。ですが、社会保険庁の解体とともに始まった「ねんきん定期便」等により、今までよりわかりやすい制度・使い勝手の良い制度になっていると思います。

国民も人間なら、政府を運営しているのも人間です。完璧な制度なんてありません。ちょっとずつ改善されていく諸制度に対して、わたしたちはもう少しだけ能動的になる必要があるのかもしれません。

次回ももう少し、年金についてお話させてください。それでは、また。

 

 

 

※1 5月の3・4・5日には「浜松祭り」というものがあって
初子(はつご)の誕生を祝って、昼には中田島砂丘で大凧を上げ、夜は豪華な御殿屋台と勇壮な練りで町内を回る浜松祭りは、440年以上の歴史を誇り、昨年は3日間で計173万人を動員しました。あくまで町内のお子さんの誕生を祝うのがベースですので、見るよりは参加するほうが楽しいイベント。飲食店や交通機関はもちろん、祭り用具店、美容院、そしてわたしたちのような廃棄物処理会社にとっても、手が回らなくなるほどの繁忙期。誠にありがとうございます。4年に1回くらいでもいいんじゃないかなんて、思っていませんよ、ええ(苦笑)。

※2 厚生年金
いわゆるサラリーマンが強制加入している年金を厚生年金と言い、1階と2階の両方に該当します。給料から天引きされていますので、払っている感覚はないかもしれませんね。加入者は第2号被保険者と呼ばれ、自営業者や学生は第1号被保険者、全額が免除されている専業主婦などは第3号被保険者と呼ばれています。厚生年金は所得比例型で、現役時の収入の50%をイメージして設計されています。したがっていくらもらえるのか、極めて複雑な計算式になっています。

※3 「75歳まで生きれば国民年金はペイする」
言うまでもなくこの計算は文字通りの「机上の算盤」です。払う金額ももらう金額も、毎年変動します。あくまで現在の金額を基に算出したに過ぎず、前提が変わってしまえばすべてが変わってしまいます。受給開始も現在は65歳からですが、それが68歳・70歳に変更される可能性は、ゼロではありません。極論を言えば「先のことは誰にもわからない」のです。「最低でも、払った金額の2倍は戻ってくるようにします」というのが、政府の絶対防衛ラインのようです。もっとも、国民年金は世代間扶養が原則になるので、本当は「ペイする/しない」という話は制度には馴染まないんですけどね。

※4 「年金がもらえないって言ってるの、誰?」という政府CM
2003年に放映されていたCMです。現在もですが、年金に対する弱年層の未納率に苦しんでいた当時の社会保険庁が作成したもので、若い人に対してタレントが「きっぱり、はっきり言い放つ感じで」作られました。その勢いに驚いた若者たちが、確かにそうだよな、ちゃんと払わなくちゃな、と納得するような落ちで。うがった見方をすれば、「政府が若者を恫喝している」ようにも見えるこの作り。最後は起用されたタレントが年金を未納していたことも発覚し、いろいろな意味で話題になりました。

※5 そもそも制度が本当に複雑で
国民年金はいわゆる世代間扶養、現役世代が高齢世代を支えるかたちになっています。貯蓄ではありませんので、結果、世代によってもらえる金額に「相当な差」がでます。また、払わなくても年金がもらえる第3号被保険者の不公平感もよく議論になります。厚生年金は昭和16年に始まり、国民年金は昭和36年にスタート。管轄する法律もそれぞれ違い、これはすべての制度設計にも言えることですが、現状に合わせて何度も「建て増し」をした結果、複雑になってしまいました。すべてを壊してゼロから作ることができれば、話は簡単なのですが、そうはいかないところがまさに政治の難しいところ。こういうことを知れば知るほど、政治家の先生方には同情したくなります(笑)。

 

 

 

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吉川徹(よしかわとおる) プロフィール
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1977年静岡県浜松市出身

遺品整理士(IS02984号)
終活カウンセラー上級インストラクター(15120603)
最終処分場管理責任者

【近況報告】
10歳の娘が今年は「お囃子(はやし)」をするということで、春先からずっと練習して来ました。「浜松祭り」では、街中を各町内の御殿屋台がまわるのですが、そのなかで笛や太鼓を吹く役どころです。わたしは自治会から交通整理を頼まれており、いろいろな人が関わってお祭りが運営されているのだと改めて実感。裏方の仕事、わたしは得意なんです(笑)。お任せください。