終活コラム

遺品整理士の終活コラム

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第29回 あなたの宗派は何ですか(下)

先生、13個も覚えられません! → だから7個でいいって

冬籠りをする熊の子供たちが、もそもそと起きだしてきそうな季節になりました。もっともそんな光景は見たことはないですが、みなさま、お元気でお過ごしでしょうか。遺品整理士・終活カウンセラー上級インストラクターの吉川徹でございます。

日本人の葬儀の9割が仏式といわれ、その仏教には一般に13宗派(※1)あるといわれています。そのような席で「ところで、あなたの宗派はどちらですか?」と訊かれても、良識ある社会人としてあたふたせずに答えたい(「うちは浄土宗でございます」)。とはいえ13宗派は多すぎる。ということで、7宗派に縮小してお話をしております。

ちなみに7宗派は以下の通り。前回はCまでお話ししました。開祖の名前まで覚えておくと、中学校の定期テストでいい点が取れるでしょう(笑)。


@天台宗(最澄) … 奈良時代
A真言宗(空海) … 奈良時代
B浄土宗(法然) … 鎌倉時代
C浄土真宗(親鸞) … 鎌倉時代

 

 

 

もっとも日本らしくない宗教、それが日蓮宗です

D臨済宗(栄西) … 鎌倉時代
E曹洞宗(道元) … 鎌倉時代
F日蓮宗(日蓮) … 鎌倉時代

では残りの3つを見ていきましょう。「D臨済宗」と「E曹洞宗」は、どちらもいわゆる禅宗と呼ばれているもの。座禅を組んで悟りを開く、の禅ですね。中国の禅は「達磨(ダルマ)」(※2)を祖としていますが、それを日本に持ち込んだのが、それぞれ栄西と道元という理解でいいと思います。

「浄土宗」・「浄土真宗」とは真逆といっていい教えで、「自力本願 = みずからの力で悟りへと至る」というところが、当時の支配階級である武士たちに強く支持されました。道場で剣を鍛え、禅寺で心を鍛える、といったところでしょうか。特に臨済宗は鎌倉・室町の両幕府から手厚い保護を受けました。高校の日本史の授業で、「京都五山・鎌倉五山」なんていう単語を耳にした方もいると思います。

そして最後は、「F日蓮宗」。実はもっとも日本らしくない宗派がこの日蓮宗です。開祖は日蓮、そのままですね(笑)。したがって「日蓮宗の開祖の名前を答えよ」というテスト問題は成立しないのですが、ちょっと考えてみましょう。開祖の名前を、宗派の名前にしてしまう。他の6つの宗派はそうではないのですから(法然宗とはいわない)、そもそもそこから変わっていますよね。

よく言われてしまうのが、いささかナショナリズムの要素が強いということ。教えとしては法華経を読み、南無妙法蓮華経を唱えることを重視しています。なんみょうほうれんげきょう、なんみょうほうれんげきょう、なんみょうほうれんげきょう(※3)

また、日蓮宗だけに救済があるとし、他の教えはむしろ救済から遠くなってしまう、なんていう思想も、排他的かつ非日本的。海外の宗教ではよくある性格ですが、日本ではなかなかお目にかかれません。阿弥陀如来への念仏は地獄へ入ることであり(念仏無間)、禅への傾倒は魔の所業であるとさえ説きました(禅天魔)。

多様性を良しとし、欧州やアラブ世界と比べて宗教戦争が極端に少ない歴史を持つ我が国では、突然変異的な宗派といえるのかもしれません。

 

 

 

良きキリスト教徒、良きイスラム教徒であることを

「キリスト教徒は良きキリスト教徒であることを、イスラム教徒は良きイスラム教徒であることを、神は望んでおられます」。これはマザー・テレサ(※4)の言葉なのですが、宗教・宗派に上下も尊卑もなく、多様性が担保された社会こそ、価値ある世界だとわたしも信じています。

したがって、ここで神学論争をするつもりはなく、あくまで仏教の7宗派に関する最低限の知識についてお話してきました。初歩の初歩の解説ですので、わたしの書きように教義上の突っ込みどころはあるかもしれませんが、それはどうかご容赦いただきたいと思います。義務教育・中等教育レベルのお話とご理解ください。

日本人は自分たちのことをよく無宗教だと表現しますが、わたしはそうは思いません。これほどまでに豊かな仏教文化があるのですから、日本人の9割は仏教徒だと言っていいと思います。そしてそれがあまりにも当たり前過ぎて、前述のような言い方になってしまうのだと個人的には思っています。

拙い解説でしたが、多少なりとも伝わったでしょうか。ご清聴、ありがとうございました。ところで。あなたの宗派は、何ですか?(※5)

 

 

 

※1 13宗派
13宗で、実は56派あると言われています(十三宗五十六派)。56! さすがに大学入試でも出題されない細かさだと思いますが、例えば浄土真宗が「十三宗」、大谷派が「五十六派」にあたるそうです。奥が深いですねえ。

※2 「達磨(ダルマ)」
達磨、菩提達磨、ボーディダルマとも呼ばれ、インド人の仏教僧です(中国人ではなく、インド人なんです!)。西暦5世紀後半の人物で、150歳まで生きたとか。中国(宋)へ渡り、禅を広めた伝説的な人物で、日本の禅宗の開祖にもされています。あまりにも長い間禅を組んでいたため、両手両足が腐り落ちた、という話は有名ですよね。縁起物のダルマとして、現代日本にも残っています。また実在を疑うような記述もあります。

※3 なんみょうほうれんげきょう
7つもあって、結局よくわからなかったよ、という方はこんな理解でどうでしょう。「なんみょうほうれんげきょう」が出てきたら日蓮宗。「なむあみだぶつ」だったら浄土宗。自由な感じだったら浄土真宗。禅がでてきたら、臨済宗か曹洞宗。古くからあったら、天台宗か真言宗。エキセントリックだったら日蓮宗です。・・・ええっと、乱暴過ぎですかね(笑)。

※4 マザー・テレサ
マザ・ーテレサのこの言葉ですが、これ、本当にすごいと思います。敬虔なカトリック信者が言うことではない(笑)。ここでいう「神」とは、ゴッドなのでしょうか、アッラーなのでしょうか、ヤーヴェなのでしょうか。もはや宗教を超越した彼女独自の視点ですが、わたしはいちばん好きな言葉です。ちなみに2番目に好きな言葉はこれ。曰く、「愛の対義語は憎悪ではなく、無関心である」。マザー・テレサが苦手だという方もいるとは思いますが、彼女は本当に教養人・哲学人であったと思います。ちなみに出身はマケドニア。彼女はインド人ではないんですよね。

※5
 あなたの宗派は、何ですか?
前回のコラムでも触れましたが、浄土宗の信徒であるわたしにとって、「他力本願」の教えはとても尊いもの。したがって、自力本願たる禅宗との相性は今ひとつ。今ひとつ興味が湧きません。座禅も苦手だし。歴史で宗教の授業を受ける生徒の気持ちがよくわかります。とはいえ、大人になれば宗教は本当におもしろいなと思います。世界宗教の話もいつかしたいですね。ヒンドゥー教とか、英国国教会とか。

 

 

 

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吉川徹(よしかわとおる) プロフィール
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1977年静岡県浜松市出身

遺品整理士(IS02984号)
終活カウンセラー上級インストラクター(15060194)
最終処分場管理責任者

【近況報告】
先日のセミナー終了後、主催者側からこっそりアンケート内容を見させていただきました。特に問題がなかったようで、こっそりひと安心。お客様の声って大事ですよね。いつもびくびく、気になる小心者です(笑)。そういえば塾講師時代も生徒アンケートに一喜一憂していたなあ、なんていうのも今は昔。慣れは安全を担保しない。いつでも初心を忘れずにいたいと思います。