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第27回 「8050問題」について

「8050」と書いて、「はちまるごーまる」と読みます

新年、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。今回は冒頭のご挨拶をさっくり割愛して(笑)、「8050問題」(※1)について考えたいと思います。

ちなみに「2025問題」と「2040問題」(※2)は人口構成にまつわる諸問題、「8020運動」は80歳になっても自分の歯を20本以上残そうという運動、です(笑)。そして「8050問題」は、いわゆる「ひきこもり」が長期化・高齢化し、その親も高齢世代になり、家族が困窮する問題を指します。

一般にひきこもりの子には収入がなく、親と同居し、親の年金をあてに暮らしています。しかし親が他界すれば年金も支給されなくなるので、残った子の生活費はどうなるのか。親が80歳を迎え子が50歳になり、将来を考えて途方に暮れるという問題です。

ちなみに政府は2010年と2015年にひきこもりの該当者を調査(※3)しており、2010年は69.6万人、2015年は54.1万人と「ひきこもりの数は減っている」のです。これ、本当におもろくて、そのときのひきこもりの定義は「年齢が15歳から39歳」でした。40歳以上はひきこもりにカウントしない、と。

どこで線を引くかで都合のいい数字を導き出せる、というよくある話です。前回の高齢者の定義の話と似たところがありますよね。ところがそれが実態にまったく合っていないので、今年度は「40歳から59歳」を対象にして調べるそうです。

ひきこもりは問題が複雑なため、対策を後回しにし、とりあえず数字だけは把握しておこうという程度の認識だったのでしょう。そしていよいよ「逃げられなくなって」、対象年齢を上げ、「8050問題」などと言い出す。残念ですが、政府の責任は非常に重いと言えます。

 

 

 

親の他界とともに自動的に生活保護に・・・?

ひきこもりになる理由はそれぞれでしょう。不登校をきっかけにひきこもる場合もあれば、就職先がブラック企業で心身ともに疲弊してしまったケース。あるいは先天的な精神疾患の場合もあると思います。2015年の調査では、ひきこもりの期間が7年以上というものが最も多く(34.7%)、一度失敗すると復帰できない現代社会の貧しさを表しています。

彼らのその後を簡単にシミュレーションしてみましょう。

50歳のひきこもりの方をAさんとし、Aさんの親が他界すると年金の支給はストップします。Aさんが80歳まで生きると仮定すると、残りは30年間。厚生年金はなく、仮に国民年金にも未加入だった場合、1か月の生活費に15万円かかるとすると、生涯で5,400万円が必要(※4)です。

つまり、親は5,400万円を遺産としてAさんに残してやる必要があります。相続税すら発生してしまうこの金額、ぜんぜん現実的ではないですよね。

そうすると考えられるのは生活保護の申請ですが、例えば家や自家用車を所有している場合、これらを手放さなければなりません。自家用車はともかく、親から相続した家を売却し、新たに物件を探して賃貸契約をする。ひとりになってしまったひきこもりのAさんに、そこまでの行動力があるでしょうか。

仮に生活保護までたどり着けたとしても、こういうかたちで申請数が増えれば国家財政を逼迫し、支給費の引き下げ、あるいは支給資格の厳格化へと繋がり、より弱いセイフティネットになってしまいます。つまり、「本当に逃げられない」問題なのです。

ちなみに理想論だけを言えば、いったんセイフティネットで受け止め、本人に合わせたケアをし、再び社会に送り出す。月に10万円稼ぐことが出来れば、月々の生活費の不足分は5万円となり、必要貯蓄額は1,800万円まで下がります(※5)

 

 

 

支援の輪は確実に広がっています

2018年を迎えた現在、ひきこもりはもはや、家庭だけの問題ではありません。介護と同様、国家の問題になりました。家族だけでは解決できないのです。

実際にすでに動き出している自治体もあります。看護士、作業療法士、精神保健福祉士、精神科医等でチームを作り、共同でサポートに当たる。例えば最初は看護師が訪問したけれど、ひきこもりの方は簡単には面会させてくれない。次に精神保健福祉士が一緒に同行し、ドア越しに会話をし、少しずつ信頼関係を築いていく。そんなケースもあるそうです。

時間かかりますが、一件一件、一人ひとりの状況に合わせて丁寧にケアしていくしかありません。ゴールは本人を社会に戻すこと。ほんの少しでもお金を稼ぐことが出来るようになれば、状況は劇的に改善します。あわせて実社会側の寛容性も必要でしょう。

繰り返しになりますが、ひきこもりも国家が解決すべき問題。本人が怠惰だからとか、甘えているだけだとか、そういう無理解な根性論・精神論では、問題は1ミリも解決しません。現実にひきこもるお子さんに悩んでる方は、まずは自治体に相談してみてください。

浜松市の場合は「精神保健センター」が相談を受け付けています。家族からの相談ももちろんOK、電話での事前予約が必要ということですので、電話番号を記しておきます。個々の専門家が連携して問題に対処する。終活カウンセラー協会と似たところがあるというところで、今回はお開きです。それでは、また。

・浜松市精神保健センター 053-457-2709(月曜から金曜まで)

 

 

 

※1 「8050問題」
2016年4月にこんな事件が起きています。マンションの一室で、85歳の母親と54歳の長男の遺体が発見されました。将来を悲観する遺書も見つかり、母親の死亡後、無職でひきこもりがちだった長男は衰弱死した可能性があるとのこと。非常に痛ましい事件です。世間に恥ずかしい、という意識もあるかもしれませんが、まずは「ひきこもりの見える化」から。今回こそは政府の精緻な調査を希望します。

※2 「2025問題」と「2040問題」
約800万人いるとされる団塊の世代。この世代が前期高齢者になるのが2015年、そして後期高齢者になるのが2025年と言われています。2025年になると高齢者と生産年齢人口(支える人)の比率が「 1 : 1.9 」になり、2040年になるとそれが「 1 : 1.5 」にまでなります。2040年の日本は、人類がいまだかつて迎えたことのない「超弩級高齢社会」になるということです。

※3 ひきこもりの該当者を調査
全国5,000世帯を抽出し、調査員が自宅を訪問。本人や家族に就労や生活状況、ひきこもりの期間などを記入してもらって調査。新調査では40歳から59歳の人がいる世帯を、同じように5,000世帯ピックアップするようです。結果の公表時期は未定ということですが、「中高年ならではの課題を抽出し、必要な支援を考えていきたい」とのこと。今度こそ、支援の手が後手に回らないことを。

※4 生涯で5,400万円が必要
一か月に必要な生活費を15万円とすると、年間で180万円。30年で5,400万円という計算です。厚生年金はともかく、もし運よく国民年金に加入してあれば、月々の必要額はもう少し下がります。国民年金だけでは生活できない、とはよく聞く言葉ですが、生活の下支えにはなります。あるとないでは大違い。どなたさまも是非、ご自身の年金の加入状況はご確認ください。 

※5
 必要貯蓄額は1,800万円まで下がります
上記と同じように、「月5万円 × 12か月 × 30年間」で1,800万円という数字。ですが、自分で書いておいて何ですが、机上の数字に過ぎないと言われればそのとおり。若いときはともかく、80歳で月に10万円を稼ぐことが出来るかどうか。80歳まで稼ぎ、80歳で他界するという設定にも無理があります。生涯現役、身体が動く限り働く。健康な方はそうせざるを得ないのが現代日本のようです。

 

 

 

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吉川徹(よしかわとおる) プロフィール
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1977年静岡県浜松市出身

遺品整理士(IS02984号)
終活カウンセラー上級インストラクター(15060194)
最終処分場管理責任者

【近況報告】
2018年もどうぞよろしくお願い申し上げます。2月6日(火)には終活カウンセラー協会主催の「初級検定(浜松開催)」で、1科目だけですが検定講師を担当します。再びのオファーをいただけてひと安心(笑)。また2月25日(日)には「初級終活セミナー(クリエート浜松)」を予定しております。詳細はまたお知らせさせてください。