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第26回 もはや65歳は高齢者ではない

揺らぐ「高齢者(=65歳以上)」の定義

年末年始のお忙しい時期、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。ご多分に漏れず、わたしたちのような廃棄物処理業者も本当に繁忙期。年末の片づけをしたから来てよ、とお声掛けをいただくのは本当に有り難いのですが、車両も人も余剰はなく。早いもの順からご予約が埋まってしまいますので、ご理解賜りたいと思います・・・。

さて。今回は「高齢者の定義が揺らいでいる」というお話です。

一般的には65歳以上を高齢者とするのですが、これは1950年代にWHO(世界保健機関)が定めた(※1)とされており、日本ではそれを採用しております。そしてそれが昨今の現状に合致しなくなっている、ということです。

例えば街を歩く65歳くらいの方に、「ご自分を高齢者だと思いますか?」とインタビューすれば、おそらくは多くの方がNOと答えるのではないでしょうか。実際、今どきの65歳の方はぜんぜんお若いですしね。

 

 

 

定年を翌年に控えた会社員、それが波平なのです

現在の定年は60歳が一般的ですが、昔はどうだったのか見てみましょう。

例えば1960年(昭和35年)。男性の平均寿命は65歳で、定年退職は55歳でした。引退して10年間隠居生活を楽しんだあとにお迎えが来る、というのが平均値です。今聞くと本当にびっくりなのですが、定年が60歳になるのは1980年代といわれています。

これはセミナーでよく使われるジョークなのですが、サザエさんにでてくる磯野波平氏、年齢はいくつだと思いますか? 定年を1年後に控えた一家の大黒柱、彼はなんと、54歳の設定なのです。そしてそこから40年以上たってもまだ、定年を迎えておりません(※2)(← ここ、笑うところです)。

平均寿命が65歳で、高齢者の定義も65歳、定年はその10年前。1960年はそんな年でした(※3)。そしてそれを2017年の現代に置き換えて逆算すると・・・、げに恐ろしいことに、以下のようになるのです。

・平均寿命は80歳(以上)、高齢者の定義は80歳、定年退職は70歳

したがって。「日本老年学会・日本老年医学会」が、今年の頭に高齢者の定義を75歳以上とする引き上げ案を発表(※4)して物議を醸しましたが、理屈だけを言えば「何もおかしいことは言っていない」のです。

そしてもちろん、わたしたちがこの提言に違和感を感じるのは、年金の支給もそれに合わせて遅らせようとする政府の陰謀があるからではないか、と疑ってしまうからです。高齢者の定義が75歳なら、国民年金の支給も75歳からでいいじゃん、と。

 

 

 

問題がさっぱり解決するベストアンサーは、ない

年金の支給時をいつからにするか、これは極めてデリケートな問題です。例えば厚生年金は昭和17年に始まっていますが、当時の平均寿命は50歳程度、支給開始年齢は55歳でした。

これは厚生年金のケースですが、支給開始が平均寿命プラス5歳ですから、「もらえない人のほうが多いのが年金である」という考え方も成り立つのです。ひと握りの人に支給される特別なご褒美、というのが本来の姿だったのかもしれません。

国民年金の支給が80歳になるのはさすがに極端ですが、今の65歳からというのが段階的に引きあがる日はそう遠くないでしょう。前にも話しましたが、日本の年金制度は常に対処療法で欠陥を修正してきたので、いつまでたってもすっきりしません。

すべてゼロにして制度を再設計することができればいいのですが、それによって損する人がたくさんいる以上、簡単にはいきません。自分は落選してもいいから国民年金を改革するんだ、という政治家もいません。そもそも落選したら改革はできないのですから。

わたしたちが抱える問題の多くがそうであるように、すべてがさっぱり解決するベストアンサーはないのです。個人的には、高齢者の定義を(先の提言を少し下回った)70歳にし、それに合わせて国民年金の支給も70歳になるのはやむなしかなと思います。消極的賛成、ですけれど。


・・・年末というのに、いささか暗い話をしてしまいました。反省(笑)。人口は減少しますし、各種の社会保障も手薄くなるであろう近未来ですが、それがイコールで個人の幸せと正比例するわけではありません。絶望する必要は何もないのです(笑)。

わたしは、誰からもどこからも自由な幸福な個人である。2018年こそ、そうありたいものです。といったところで今年最後の「遺品整理士の終活コラム」でした。どうぞみなさま、良いお年(※5)をお過ごしくださいませ。今年1年、誠にありがとうございました。

 

 

 

※1 1950年代にWHO(世界保健機関)が定めた
日本では65歳以上とされているのが一般的ですが、実際には明確な線引きはない、という意見もあります。また、国連では60歳以上と定義されており、今ひとつ曖昧と言えば曖昧。医療に関する法令では、65歳から74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と定めています。また人口調査等では64歳以下を現役世代とし、15歳から34歳を青年、35歳から64歳までを壮年としています。

※2 そこから40年以上たってもまだ、定年を迎えておりません
登場人物の年齢がフリーズしたまま40年以上たっている磯野家と、その周辺の人々。40年以上も「乳幼児とのふたりのだけの世界」に閉じ込められている「波野タイコ」は、幸せなのかどうか悩んでしまいます。そして、近所に住む「伊佐坂ウキエ」は女子高生なので、40年以上も「人生の本物の青春」を謳歌しています。ずっときらきらなまま、羨ましいですね。逆に彼女の実兄の「伊佐坂甚六」は浪人生。40年以上も浪人生活を続けているなんて、そろそろ別の道を探したほうが・・・、なんてね。

※3 1960年はそんな年でした
1960年、昭和35年はどんな年だったでしょうか。簡単に振り返ってみましょう。まずカラーテレビが本格的に始まった年だそうです。皇太子殿下が生まれ、ビートルズが初来日。そんなことも含めてテレビが飛ぶように売れたそうです。「3C」なんて言葉もありましたね。そして東京オリンピックが1964年ですから、高成長時代を迎えて国民全体が高揚感に包まれている、そんな世相であったと思われます。わたしは生まれていないので、後半はちょっぴり想像ですが(笑)。

※4 高齢者の定義を75歳以上とする引き上げ案を発表
2017年1月5日の発表でした。75歳以上を高齢者とし、65歳から74歳を准高齢者とする提言をしました。社会保障費を削減するための前準備だとか何とか、さんざん叩かれましたが、個人的にはわからないでもない提言。いずれにせよ、高齢化があまりにも速いスピードで進んでいるため、社会の端々でひずみが起きているという話です。何度も言いますが、それでもなお、こういう社会になることはあらかじめ予想できていた話なのです。政府の無策と言われても仕方ありません。 

※5
 どうぞみなさま、良いお年を
みなさまの2017年はどんな1年だったでしょうか。わたしは「終活カウンセラー上級インストラクター」の資格取得が3月でした。まだ1年たっていなかったのですね。終活や環境に関する個人セミナーを計5回し、終活初級検定の講師を1回しました。あれ? 何で1回しかオファーがなかったんだろう。何か粗相をしたのかもしれません(笑)。ちなみに今回のタイトルは「もはや戦後ではない」から流用しました。有名な1956年の経済白書から、です。そしてその預言は大きく外れました。正解は、「どこまでいっても戦後は終わらない」でした。良いお年を。

 

 

 

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吉川徹(よしかわとおる) プロフィール
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1977年静岡県浜松市出身

遺品整理士(IS02984号)
終活カウンセラー上級インストラクター(15060194)
最終処分場管理責任者

【近況報告】
サンタクロースの実在を信じていた娘(11歳)ですが、さすがにとっくの昔に真相を知ってしまい、何と今年は逆に、わたしに「サンタからの手紙」をプレゼントしてくれました。中身はメッセージと「娘の世話をしなくてよい券」。何てピンポイントな物をくれるサンタなのでしょう(笑)。「パパにも来てよかったね」と娘は言うのですが、同時に「いい子にしていないと来年は来ないよ?」とも。何だろう、これ。脅されている気もしますが、なるほど、大人がこうしていたのかと実感(笑)。来年も来るかなあ。